ホラー│

ノベルアップ秋田書店マンガ原作コンテスト応募作品。

おかげさま

タイトルの「おかげさまで」は、本来は他者への感謝を表す身近な言葉です。日本人の普段の生活によく染みこんでいますし、筆者自身の口癖でもあります。

作中では服従を示す教義となり、他人を侵食する合言葉となり、終いには島を飛び越えてSNSに拡散されていきます。

読んだあと、「おかげさま」と聞こえたときに思わず振り返ってしまうことに成功させられたら嬉しいです。

制作背景

秋田書店のマンガ原作コンテストに応募するにあたり、提示された題材の中から「島×ホラー」を選んで書きました。

島という舞台から妄想を広げ、船でしか出入りできない、外界から隔絶された土地でしか成立しない信仰を思いつきました。雨が止まず(←私の癖です。大事)、島民が光を避けて暮らしている。住民をとりまく環境すべてが教義の正しさを証明しているように見える島を作ろうと考えました。

そこから生まれたのが、雨を天子の慈愛とし、影に馴染むことを救済とする階島です。島の外では変な風習でも、住民にとっては生まれたときから当たり前にある理です。そのため、物語の前半は外部の人間ではなく、教義を心から信仰する称影の視点で描いています。

一方で、閉ざされた島へ外から何を侵入させれば、最も激しく揺さぶれるかを考えました。そこで登場したのが、晴天と善意を連れてくる天野陽介です。

影に伏すことを恩徳とする島へ、「顔を上げてください」「光を浴びましょう」と語りかける人物がやってくる。島の人間から見れば災厄以外のなにものでもありませんが、本人には誰かを傷つけている自覚は全くありません。

人を影へ導く救済と、人を光へ導く救済。正反対のものを衝突させるとどうなるか顛末を見守ってください。

少しだけ裏話

本作の根底にある世界観は、カクヨムに掲載している長編小説『死に損ないの深い陰は嘘にぬれる』と繋がっています。

長編にも光恩や、おかげさまという言葉を掲げ、人間を救済の名のもとに利用する教団が登場します。また、人間の身体を苗床として繁殖する寄生種と、それを社会制度の中へ組み込んだ世界が描かれています。

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