現代ドラマ│
じゃないほうの秋葉原ばかり拾い続けるコンカフェの女のコの話です。
私は以前から、街について誰の言葉が取り上げられ、何が記録として残されるのかに関心がありました。
街の歴史として語られるのは、有名な場所や大きな出来事、多くの人が共有しやすい思い出が中心です。でも、実際にその街で過ごした時間は、もっと説明しにくいものの積み重ねでできています。
主人公のタマは、コンカフェで働きながらも、主役として見られることや自己演出を好みません。一方で、誰にも見られていないものをよく見つけます。
本当にそんな子がいる? なんて思うでしょうが、アキバも狭いエリアにたくさんの店があり、たくさんの人が働いてますので、ひとりくらいは外れ値がいるのです。たぶんね。
店名や何を扱う店だったのかを詳しく知らなくても、そこにあるとなんかほっとして、なくなると寂しくなる場所が、皆さんも多かれ少なかれあると思います。そこで買ったものが、どこにでもある品物だったとしてもです。
タマはそういうのがとても多いコだった。本作には、私が見てきた秋葉原の、ごくローカルな端っこを詰め込みました。大通りから少し外れた道、誰も立ち止まらないもの、誰かの語る「正しい秋葉原」からこぼれた小さな断片です。
嘘くさいなって思ったものが、だいたい本当にあったり。不思議な街です。
詳しく知らなければ、街を好きだと言っちゃダメなわけがありません。同時に、長く見てきた人にしか拾えない、どうでもよさそうなものも確かにあります。
あなたの町にも、名前はよく覚えていないのに気になっていた店や、いつも横目で見ていたものはないでしょうか。
そんな、ひとりひとり違う町への愛着を、タマの物語に託しました。