いちばん最初に書いた一次創作です。ジャムセッションのお話です。

現代ドラマ│

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制作背景

『旋律による殉教』は、私が初めて書いた一次創作です。

出発点にあったのは、装甲車と鉄パイプの音をリズム隊にした、ピアノとサックスのジャムセッションが聴きたい!という欲望でした。

舞台には、学生運動の熱が街を覆っていた昭和の東京を選びました。現実が背負っていたものを軽く扱わないために資料を調べ、当時のジャズ喫茶の様子や時代の空気が、人物の呼吸や演奏の中に伝わるように書きました。

二人が演奏するのは六月二十五日です。この日には、一年違いで残された二つのジャズのライブ録音を重ねています。

かつて神童と呼ばれた霧江は、陰翳を抱えたピアノを弾きます。花屋でありサックス奏者でもある唐須は、フラジオの咆哮で、静けさへ踏み込んでいきます。水墨画のようだった霧江の演奏が、セッションの中で原色の油彩へと変わり、鍵盤の上で咲き乱れていく。霧江が完成された瞬間を唐須は悪友であり、ライターの来田に託します。

音の変貌の過程を文章で鳴らすことが、この作品で最もやりたかった場面でした。打鍵や呼吸、壁や床を伝う震動をフルで使い、文で演奏を立ち上げようとしました。

地上のシュプレヒコールさえも地下にいた三人にとっては、コール&レスポンスの一部です。

花屋である唐須にとって、剪定は最も美しい状態へ整えるための行為です。霧江を音によって剪定し、ジャムセッションという台木へ接ぎ、次の狂い咲きを待つ。一度きりの殉教で終わらせず、何度でも逝き、生き、彼を活かす地獄のような祝福を授けました。

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